その二 脱獄犯とアイドル
親子、それは決して切れない絆がある----
がまだ土方に取調べをされてる頃、逸早く誤解が解けた銀時、新八、神楽の3人は漸く長い取調べから開放され苛立ちげに真選組の屯所を出る所だった。
銀時「命張って爆弾処理してやったってのによォ、三日間も取り調べなんざしやがって腐れポリ公」
結局、何だかんだで疑いを晴らすのに3日間もの時が経っていた。別の場所に連れて行かれたは大丈夫だろうか・・・。真選組の隊士が言うには、彼女の疑いこそ既に晴れているが別の用件で拘束されていると言う。唯でさえ長い詰問で苛立つのに、未だにを開放させない真選組になお苛立ちが増す。
新八「もういいじゃないですか、テロリストの嫌疑も晴れたことだし」
銀時「どーもスッキリしねェ。ションベンかけていこう」
突然とんでもない事を言い出した銀時はズボンのベルトに手をかけ、カチャカチャと音を立てながら本当にやる勢いだ。
神楽「よっしゃ、私ゲロ吐いちゃる」
銀時の行動に感化される様に、人差し指を喉に突っ込む神楽。周りの通行人が可哀想な者を見るような目で見つめているのを彼らはわかっているのだろうか・・・。
新八「ちょ・・・アンタ一体何するつもりなんスか!!さんが戻ってきたらどうするんですか!!」
銀時「そりゃあお前、そん時ァに銀さんの立派なモンを拝んでもらうに決まって----」
新八「バカな事言ってんじゃないですよ!!そんなモンさんに見せないで下さい!!アンタら器の小さいテロすんじゃねェェ!!さんは心配ですけど、アンタらかまっていたら何回捕まってもキリないよ。僕、先に帰ります。ちゃんと真っすぐ家帰れよ、バカコンビ!!」
何を急いでいるのか、新八はそう銀時達に言うと足早に去って行く。
銀時「オイオイ、ツッコミ居なかったらこの漫画成立しねーぞ。はマトモだけどアイツはツッコミにゃ向いてねーしな・・・しゃーねぇな、今週は俺がツッコミでいくか」
神楽「オェ!!」
銀時「おまっ・・・どこにゲロ吐いて・・・くさっ!!」
そんなやり取りをしてると、大きな笛の音が聞こえ突然屯所の屋根から人が飛び降りて来た。運悪く屋根から飛び降りてきた人物が着地したのが、神楽が吐いたゲロの上で・・・。
???「う”え”!!」
男は見事に足を滑らせ思い切り転び地面に頭を打ち付けた。
???「いだだだだだだ!!それに、くさっ!!」
遠くで鳴っていた笛の音が近づき、屯所から役人らしき男達が銀時達の傍に走ってくる。
役人「オイ、そいつ止めてくれ!!脱獄犯だ、くさっ!!」
銀時「はィ?」
突然の出来事に訳が分からない銀時と神楽。役人達が男を捕まえようと近寄ると男が突然、近くにいた神楽を羽交い絞めにした。
???「ちっ、来るんじゃねェ!!このチャイナ娘がどーなってもいいのか」
役人「貴様!!」
役人に捕まらんと神楽を人質にする男。役人達も手が出せなくなる。
???「オイ、そこの白髪。免許もってるか?」
銀時「普通免許はもってっけど」
「銀さん!待っていてくれたんですか?」
そんな銀時と男のやり取りの中、漸く釈放されたが鉢合わせる。が神楽を羽交い絞めにしている男に気が付くと笑顔を真剣なものに変える。
???「お嬢さんもこの白髪の仲間みたいだな、アンタも一緒にきてもらうぜ」
神楽を人質にし、屯所の車を拝借する男。銀時を運転手に男と後部座席に座る。
銀時「なんでこ〜なるの?・・・おじさーん、こんな事してホント逃げ切れると思ってんの」
男「いいから右曲がれ」
銀時「今時、脱獄完遂するなんざ宝クジの一等当てるより難しいって」
男「逃げ切るつもりなんてねェ・・・今日一日だ。今日一日自由になれればそれでいい」
「何か・・・何か事情がありそうですね」
銀時「・・・」
男「特別な日なんだ、今日は・・・」
どこか遠くに思いを馳せる様に、車の窓から外を見る男。神楽を人質としたのは許せないけれど、危害を加えない事から悪い人間には見えなかった。きっと病むに病まれない事情があるのだろう----
お通「みなさーん、今日はお通のライブに来てくれてありがとうきびウンコ!」
観客「とうきびウンコォォォ!!」
男に従って連れてこられたのは、色々な天人や男達の熱気がすごいライブ会場だった。神楽も男も周りの観客につられてノリノリだ。唯、銀時とはあっけにとられていたけれど・・・。
お通「今日はみんな、浮世の事なんて忘れて楽しんでいってネクロマンサー!!」
観客「ネクロマンサー!!」
お通「じゃあ一曲目【お前の母ちゃん何人?】!!」
銀時「・・・なんだよコレ」
「あはは・・・」
男「今、人気沸騰中のアイドル寺門 お通ちゃんの初ライブだ」
銀時「てめェェェ、人生を何だと思ってんだ!!」
そう叫ぶなり、男の頭に踵落しをくらわせる銀時。も苦笑いをするしかない。
銀時「アイドル如きのために脱獄だ?一時の享楽のために、人生棒にふるつもりか。そんなんだからブタ箱にぶち込まれんだ、バカヤロー」
「ぎ、銀さん・・・」
男「一瞬で人生を棒にふった俺だからこそ、人生見落としてならない大事な一瞬がある事を知ってるのさ。さぁ、楽しもう!!L・O・V・E・お・つ・う!!L・O・V・E・・・」
銀時「やってらんねェ、帰るぞ、神楽」
「で、でも銀さんきっと何か事情が・・・」
神楽「え〜もうちょっと見たいんきんたむし」
銀時「あのおっさんに事情何てねェって。それより神楽、影響されてんじゃねェェェ!!」
お通に声援を送り出す男に呆れ、の手を握り会場から出ようとする銀時。
銀時「ほとんど宗教じみてやがるな、何か空気があつくてくさい気がする。、お前ェはこんな所にいちゃいけねェ。悪い虫が付く」
先程から、お通の声援は鳴り止まないもののチラチラとを盗み見している男達に気づく銀時。何だかイライラする。
???「もっと大きい声で!!」
銀時・「!」
どこかで聞き覚えのある声が聞こえて2人がそちらに目を向けてみると頭には同じハチマキをし黒い半被に身を包んだ、周りとは比べ物にならないくらい熱狂的な集団が見える。その集団をまとめる様に前に立って指示している人物こそ、万事屋の唯一常識人だと思いたい新八の姿が----
新八「オイ、そこ何ボケッとしてんだ。声張れェェェ!!」
集団「すんません、隊長ォォ!!」
「新八君・・・?」
銀時「オイ、いつから隊長になったんだオメーは」
新八「俺は生まれた時からお通ちゃんの親衛隊長だァァ!!って・・・ギャアアアア、さん!?銀さん!?何でこんな所に!?」
「色々、事情があって・・・」
銀時「こっちが聞きたいわ。てめー、こんな軟弱なもんに傾倒してやがったとは。てめーの姉ちゃんに何て謝ればいいんだ」
新八「僕が何をしようと勝手だろ!!ガキじゃねーんだよ!!」
何時もの穏やかな新八は何処やら、銀時の言葉に物凄い勢いで噛み付く新八。大人しい人間こそ、キレると怖いと良く聞くけれどまさしくそうなのかもしれない・・・」
???「ちょっと、そこのアナタ達」
銀時・「?」
???「ライブ中にフラフラ歩かないで下さい。他のお客様の迷惑になります」
そう言って銀時達に声をかけたのは年配の40代くらいの、どこかやり手の女性を感じさせる女性だった。
新八「スンマセン、マネージャーさん。俺が締め出しとくんで」
銀時「やってみろや、コラ」
「ぎ、銀さん落ち着いて・・・」
女性「あぁ、親衛隊の方?お願いするわ。今日はあの娘の初ライブなんだから、必ず成功させなくては・・・」
男「L・O・V・E・お・つ・う!!L・O・V・E・お・つ・う!!」
一際大きく声援を送る脱獄犯の男に気づく女性。
女性「・・・・・・!!アナタ・・・・?」
男「?」
久しぶりに万事屋に帰れると思いきや、突然の脱獄犯の登場で連れて来られた寺門 お通と言うアイドルのライブ会場。新八の隠れた情熱、そして男を知り合いの様に呼ぶ女性。脱獄をしてまでお通を見に来た男の真意とは・・・?この会場を包む熱狂的な雰囲気がもたらそうとしている事件。もう暫くはゆっくり出来そうにない予感がするだった----
たった僅かな逢えない時間、それが無性に寂しい