貴方の為に出来る事、君の為に出来る事 



その一 白夜叉

この胸に灯った、名の知れぬ炎----



  桂「・・・これまでか。敵の手にかかるより、最後は武士らしく潔く
腹を切ろう」



傷つき、長い時間戦ったせいで既に体力は限界を超えていた。立っている事さえ難しく、刀を地面に突き刺し必死に倒れる事だけは耐えていた。自分達2人の周りにはおびただしい数の敵【天人】。疲れ果てる自分達を見て笑っている。武士として生きている以上、武士として死にたい。屈辱的な死を迎えるくらいなら切腹をしようと決心した時だった、背中を預けて同じ様に疲れ果て座り込んだ銀時が笑った気がした。



銀時「バカ言ってんじゃねーよ、立て。美しく最後を飾りつける暇があるなら、最後まで美しく生きようじゃねーか」


そう俺に言って、疲れた体に鞭打ち立ち上がる銀時。この男は何時だってそうだ、【諦める】と言う事を決してしない。絶望的な戦況の中で、何時だってこうやって俺達を引っ張りあげてきた。そんな銀時の言葉に、フッと笑うと精一杯足に力を入れて立ち上がる。まだ諦めるのは早い、最後の最後まで這いつくばってでも生きて、生きたくても生きられなかった同志【仲間】達の分まで生きてやろうと思った。



  
銀時「行くぜ、ヅラ」


  桂「ヅラじゃない、桂だ」


その
、銀色の髪にを浴び

        
戦場を駆ける姿はまさしく夜叉



桂「天人との戦において、鬼神の如き働きをやってのけ敵はおろか味方からも恐れられた武神・・・坂田銀時」


銀時の過去に驚く新八、神楽。銀時に隠された過去がある様な気がしていたも驚きを隠せない。そんな桂の言葉を退屈そうに聞いている銀時。


桂「我等と共に、再び天人と戦おうではないか」


新八「・・・銀さん、アンタ攘夷戦争に参加してたんですか」


桂「戦が終わると共に姿を消したがな。お前の考える事は、昔から良く分からん」


銀時「俺ァ、派手な喧嘩は好きだがテロだのなんだの陰気くせーのは嫌いなの」


桂の言葉に否定の言葉を返す銀時。一瞬だけ銀時がに振り返ったが、またすぐに桂に向きかえってしまう。


出来ればには知られたくなかったのかもしれない。数多の数の天人を斬り、血生臭い戦場に自分が居たのだと。いくらが武士とは言え、彼女は決して刀を鞘から抜こうとはしないのは短い付き合いだが知っている。武士からには、人を傷つけたくない等と甘い事は口に出してこそ、言わないけれど争いごとを嫌う彼女の事だ、出来る限り傷つけたくはないのだろう。


銀時
「俺達の戦は、もう終わったんだよ。それを何時までもネチネチネチネチ、京都の女かお前は!」


桂「バカか貴様は!京女だけでなく、女子はみんなネチネチしている。まぁ・・・お前の後ろに居る女人は違うみたいだがな。そうゆう全てを含めて包み込む度量が無いから、貴様はもてないんだ」


銀時「別にモテてェとはおもわねェよ」


そう言うもなぜか銀時は、再び後ろに居るをチラリと見た。


「?」


銀時「それになバカヤロー、俺が天然パーマじゃなかったらモテモテだぞ、多分」


桂「何でも天然パーマのせいにして、自己を保っているのか哀しい男だ」


「銀さんの髪、綺麗で私は好きですよ」


銀時と桂の言い争う中、自然とでた言葉。


見た目よりずっと柔らかくて、光の加減でキラキラ光る銀時の髪は本当に綺麗だと思う。夜空に浮かぶ月の輝きにとても似ているから。


銀時「っ・・・!?桂・・・哀しくなんて無いわ。分かる奴には分かるんだよ。それに人はコンプレックスをバネにしてより高みを・・・」


新八
「アンタら、何の話してんの!?」


新八の突っ込みに咳払いしをし、桂は先程話していた内容を再び話し始めた。


桂「俺達の戦はまだ終わってなど居ない。貴様の中にとて、まだ残っていよう銀時・・・国を憂いと共に戦った同志(なかま)達の命を奪っていった、幕府と天人に対する怨嗟の念が・・・」


仲間の命を奪うと言った桂の言葉に、銀時の表情が僅かばかり暗くなった様な気がしたのはの見間違いだろうか・・・。


桂「天人を掃討し、この腐った国を立て直す。我等生き残った者が死んでいった奴等にしてやれるのはそれぐらいだろう。我等の次なる攘夷の標的はターミナル。天人を召還するあの忌まわしき塔を破壊し、奴等を江戸から殲滅する。だがアレは世界の要・・・容易には落ちまい。お前の力が要る、銀時。そしてそこの女人・・・」


「あ・・・はい、 と申します」


突然桂に話を振られ、名前を尋ねられているのだと思ったは名乗る。


桂「殿と申すのか、良い名だ。見た所そなたも武士とお見受けするが・・・」


「はい、若輩者ですがこれでも武士を名乗らせて頂いています」


桂「やはりそうか、今は少しでも同志の力が欲しい。銀時と共に殿も共に来ぬか?それに、既に我等に加担したお前達に断る道は無いぞ銀時。テロリストとして処断されたくなくば俺と来い」


「・・・」


桂はたとえ汚い手を使おうとも、欲しい物を手に入れる為に仕組んだと言っていた。銀時は・・・天人を憎んでいるのだろうか・・・?多くの仲間を殺し、地球と言うこの美しい星に突然現れて蹂躙している天人を・・・。


桂「迷う事はなかろう、元々お前の居場所はココだったはずだ」


銀時「・・・」


新八「銀さん・・・」


重苦しい雰囲気が辺りを漂いだした頃、突然部屋の襖を蹴破る大きな音がした。突然入って来た黒い服に身を包んだ男達。手には各々、刀やバズーカなどの武器を持ち寄っている。


土方
「御用改めである、神妙にしろテロリストども」


攘夷志士
「しっ・・・真選組だァっ!!」


「イカン、逃げろォ!!」


突然の出来事に訳が分からない。銀時が咄嗟に手を引いてくれなければ、とっくに捕まっていたかも知れない。桂達と共に真選組とは逆方向に逃げ出す万事屋の一同。


土方
「一人残らず討ち取れェェ!!」


リーダーらしき男の一声で、一斉に動き出す真選組の隊士達。


新八
「な、な、な、なんなんですかあの人等!?」


桂「武装警察【真選組】。反乱分子を即時処分する、対テロ用特殊部隊だ」


「あれが真選組・・・」


江戸に来て話だけは聞いた事がある。幕府にあだ名す悪人(主に攘夷志士)等を取り締まり、唯一江戸で【刀】を帯刀する事を認められた集団だ。


桂「厄介なのにつかまったな。どうしますボス?」


銀時
「だーれがボスだ!!お前が一番厄介なんだよ!!」


神楽「ヅラ、ボスなら私に任せるヨロシ。善行でも悪行でも、やるからには大将やるのがモットーよ」


銀時
「オメーは黙ってろ!!何その戦国大名みたいなモットー!」


逃げながらだと言うのに、相変わらずのやり取りをする3人。新八は逃げるのに必死で、突っ込んでる余裕がないようだ。先程の銀時と桂のやり取りが嘘の様に思える。桂の言葉と銀時の過去に僅かばかりの心に生まれた不安。銀時の悲しい過去と楽しかった日々が、もしかしたら終わってしまうのかもしれないと。けれど杞憂だったのかもしれない。今まで見てきた銀時は、何時でも真っ直な信念と仲間を思いやる気持ちを持っていた。そんな銀時が、新八や神楽を捨てて桂の元に行くはずが無い。なぜかそう思える確信があった。そして、こうやって逃げようと繋がれている大きな手は、そんな不安を消し去ってくれる様な気がした。


???
「オイ」


銀時に手を引っ張られながら、物思いにふっけっていたいたせいで後ろの気配に気づかなかった。と銀時が振り向こうとしたその刹那----


銀時・
「ぬお!!(っ!?)」


侍としての感が無ければ気付かなかったかもしれない。殺気に身を反らして避ければ目の前の壁に突き刺さる刀。


土方
「逃げるこたァねーだろ。せっかくの喧嘩だ楽しもうや」


一番後ろを走って逃げていた銀時との足が止まる。先に行った桂や新八や神楽は、どうやら逃げ切れた様だ。


土方「ん・・・?お前、女か・・・?その腰に下げてるモンは・・・」


銀時の隣に居るに気づいた土方が、腰に下げてる刀に視線を向ける。その視線から護る様にの前に身を盾にして立つ銀時。


銀時
「オイオイ、おめーホントに役人か。よく面接通ったな、瞳孔が開いてんぞ」


土方
「人の事言えた義理かてめー!死んだ魚のよーな瞳(め)ェしやがって」


銀時
「いいんだよ、いざという時はキラめくから」


そんな言い合いをしながらも、銀時は木刀を土方は刀をお互い向け合う。も一触即発な場の雰囲気に刀に手を置く。


???「土方さん、危ないですぜ」


その時、突然聞こえた少年の声。3人が声の方を見るなり爆発が襲う。


土方
「うおわァァァ!!」


沖田「生きてやすか、土方さん」


爆発の原因は、どうやら銀時と土方の間に放たれたバズーカの弾だった。とっさに避けなければ危うく三途を渡る事になりそうだった。


土方
「バカヤロー、おっ死ぬところだったぜ」


沖田
「チッ、しくじったか」


土方
「しくじったって何だ!!オイッ!こっち見ろ、オイッ!!」




その頃銀時とは、あの爆発に紛れて漸く新八達が逃げ込んだ部屋に辿りついた。


真選組隊士「副長ここです」


ホテルの一番奥の部屋に、バリケードを張り篭城を始めたテロリスト達を追い詰めた真選組。


土方
「オイッ、出てきやがれ!無駄な抵抗は止めな!」


部屋の外には大勢の真選組。何時までも立て篭もる事は出来そうにない。


新八「髪増えてない?」


漸く逃げ込んだとホッと一息入れて座ろうとしていた銀時を見るなり、部屋の全員の視線が銀時の頭に行く。それもその筈、先程の爆発に巻き込めれて銀時の髪は可哀想なぐらいボブ頭になっていた。


「ぎ、銀さん・・・私のせいで・・・ごめんなさい・・・」


銀時「ん?のせいじゃねーよ。あのヤクザ警官が・・・狭い廊下でバズーカなんて打ち込みやがって・・・」


土方
「ココは十五階だ、逃げ場なんてどこにもないんだよ」


絶対絶命の危機に、桂がふと懐に手を入れ何かを取り出す。


「そ、それはっ・・・!?」


銀時「そりゃ何のマネだ」


桂「時限爆弾だ。ターミナル爆破の為に用意していたんだが、仕方あるまい。コイツを奴等にお見舞いする・・・その隙に皆逃げろ」


「そ、そんな!?そんな物使ったら怪我じゃ済みませんよ!」


の言葉が終わるなり、銀時は桂の胸倉を掴んだ。


攘夷志士
「貴様ァ、桂さんに何をするかァ!!」


銀時「・・・桂ァ、もうしまいにしよーや。てめーがどんだけ手ェ汚そうと死んでいった仲間は喜ばねーし、時代は何も変わらねェ。これ以上薄汚れんな」


桂「薄汚れたのは貴様だ、銀時。時代が変わると共に、ふわふわと変節しおって。武士たる者、己の信じた一念を貫き通すものだ」


銀時「お膳立てされた武士道貫いてどーするよ。そんなもんの為にまた大切な仲間失うつもりか。俺ァ、もうそんなの御免だ。どうせ命張るなら俺は俺の武士道を貫く。
俺の美しいと思った生き方をし、俺の護りてェもん護る


「銀さん・・・」


強い決意がにじむ銀時の瞳。何も迷いのない真っ直ぐな信念。この人なら大丈夫だ、そう思わせてくれる。銀時の言葉が嬉しくて笑顔になる。そんな時、自分の着物をツンツンと引っ張る神楽。


「うん?どうしましたか、神楽ちゃん?」


神楽「、銀ちゃん」


・銀時「?」


神楽に呼ばれて振り向く一同。


神楽
「コレ・・・いじくってたら、スイッチ押しちゃったヨ」


可愛らしく言う神楽だが、話の内容は十分部屋に居る全員の顔を蒼くさせるのに十分だった。



その頃真選組はと言うと----


真選組隊士「オーイ、出てこーい。マジで撃っちゃうぞ〜」


バリケードを敷かれた入り口に集まる真選組。どんなに待てども中からテロリスト達がでてくる様子は無い。


沖田「土方さん、夕方のドラマの再放送始まっちゃいますぜ」


土方
「やべェ、ビデオ予約すんの忘れてた。さっさと済まそう、発射用意!!」


警官の言葉とは思えない2人の会話。土方の指示で一斉に入り口に向けてバズーカを向ける隊士達。撃とうとしたまさにその時----


大きな音を立て、中から飛び出す銀時達に慌てだす隊士達。


真選組隊士
「なっ・・・何やってんだ止めろォォ!!」


銀時
「止めるなら、この爆弾止めてくれェ!!爆弾処理班とかさ・・・なんか、居るだろオイ!!」


銀時が見せる丸い爆弾の数字は僅か10秒足らずを指している。それを見た隊士達は慌てて逃げ始める。


真選組隊士
「おわァァァ、爆弾もってんぞコイツ」


銀時
「ちょっ、待てオイぃぃぃ!!」


物凄い速さで逃げ去る隊士達。


銀時「げっ!!あと6秒しかねェ!!」


「何処か・・・何処か外に投げ捨てられる場所は・・・!?」


新八
「銀さん、窓、窓!!」


銀時
「無理!!もう死ぬ!!」


新八の指差す方に窓があるが、とても走って間に合う距離では無い。


神楽
「銀ちゃん、歯ァ食いしばるネ」


「神楽ちゃん・・・?」


何を思ったのか、そう銀時に声をかけた神楽は愛用の傘を握り締めた。


神楽
「ほあちゃアアアアア!!」


夜兎のバカ力で銀時を傘で殴り飛ばす神楽。物凄いスピードで窓へ飛んでいく銀時。爆弾の数字は僅か3秒----


銀時
「ふんぐっ!!」


窓から飛び出た銀時は、渾身の力で空に爆弾を投げる。


「ぎ、銀さぁぁぁぁぁん!!」


空高く爆弾の爆発音が鳴り響く。は慌てて銀時の落ちていった窓を除き見る。


新八
「ぎっ・・・銀さーん!!」


神楽
「銀ちゃん、さよ〜なら〜!!」


爆発を見ながら桂は、用意してあったヘリに乗り込もうとする。


  
銀時「バカ言ってんじゃねーよ、立て。美しく最後を飾りつける暇があるなら、最後まで美しく生きようじゃねーか」


桂「フン、美しい生き方だと?アレの何処が美しいんだか。・・・だが昔の友人が変わらずに居るというのも、悪く無いものだな・・・。しかし、殿と言ったか・・・あの瞳の色・・・もしかして彼女は・・・」




窓から外に投げ出された銀時は、咄嗟に隣のビルの垂れ幕にぶら下がっていた。そんな銀時を見てホッと安心する万事屋メンバー。


その後、事情聴取の為真選組の屯所に連れて行かれる事になった4人。


銀時「なァ、なァ、ちゃん」


「はい?」


パトカーの後部座席に乗りながら隣の席に座るに声をかける銀時。ちなみに4人は乗りきらなかったので、新八と神楽は別のパトカーだ。


銀時「あの時さァ、言ってくれた事ホント?」


「あの時・・・?」


銀時「ヅラが俺の頭けなしてる時に言ってくれた言葉」


  「銀さんの髪、綺麗で私は好きですよ」



そう言えばそんな事を言った気がする。銀時は自分の髪にコンプレックスがあるみたいだけど、私はそんなに気にする事ではないと思う。だから嘘偽り無い言葉を言っただけだから。


「はい、本当ですよ。銀さんの髪、お月様みたいで本当に綺麗ですから」


銀時「っ・・・」


そう言って微笑む彼女。


今までこの髪をバカにする人はおおけれど、好きだと言ってくれた人なんて居なかった。彼女の笑顔を見れば、本当にそう思ってくれてるのが分かるからなおさら嬉しかった。心に灯った小さな炎。それは温かく、穏やかな気持ちにさせてくれるまだ名も知らない感情。




この名も知らぬ感情は
。それを知るのはもっと先