その二 攘夷戦争
貴方と出逢ったのは、きっと偶然じゃない----
アナウンサー「----に続き今回、卑劣なテロに狙われた戌威星大使館。幸い死傷者は出ていませんが・・・え・・・あっ、新しい情報が入りました。監視カメラにテロリストと思われる一味が映っているとの・・・あ〜〜〜、バッチリ映ってますね〜」
新八「バッチリ映っちゃってますよ、どーしよ姉上に殺される」
神楽「テレビ出演、実家に電話しなきゃ」
「あう・・・神楽ちゃん、嬉しいのは分かりますけどそれは止めたほうが良いです・・・」
桂と言う、どうやら銀時の知り合いらしい人物の後に着いて来てたどり着いた場所は、とあるホテルの一室。連れて来た本人は少し席を外すと何処かへ行ってしまい、時間を持て余した神楽が部屋のテレビをつければ先ほどの出来事が報道されていた。事が大きくなってしまい、これでは自分達は小包を頼まれただけだと言っても信じてもらえないかもしれないと、溜息をつく。
新八「何かの陰謀ですかね、こりゃ。何で僕らがこんな目に。唯一、桂さんに会えたのが不幸中の幸いでしたよ。こんな僕らをかくまってくれるなんて、銀さん知り合いなんですよね?一体どーゆー人なんですか?」
新八の言葉に少し引っかかりを感じる。桂に会ったのは本当に【偶然】なのだろうか・・・?銀時と久しぶりに会ったと言う割には、桂は驚いている様子は無かったし何より大使館の前になぜ居たのだろう?と疑問が浮かぶ。
銀時「ん----、テロリスト」
・新八「えっ・・・?(はィ!?)
銀時の何時もの冗談だろうか?しかし彼の表情は冗談を言ってるようには見えない。そんな時、隣の襖が開いて何人かの人間が入って来た。
桂「そんな言い方は止せ、この国を汚す害虫”天人”を打ち払いもう一度侍の国を立て直す。我々が行うのは国を護るための攘夷だ。卑劣なテロ等と一緒にするな」
新八「攘夷志士だって!?」
「・・・」
桂には何かあると思っていたけれど、まさか攘夷志士だとは思わなかった・・・。
神楽「なんじゃそらヨ」
部屋に置いてあった備え付けのお煎餅を頬張りながら尋ねる神楽。
新八「攘夷とは二十年前の天人襲来の時に起きた、外来人を排そうとする思想で高圧的に開国を迫ってきた天人に危機感を感じた侍は、彼らを江戸から追い払おうと一斉蜂起して戦ったんだ。でも天人の強大な力を見て弱腰になっていた幕府は、侍達を置き去りに勝手に天人と不平等な条約を締結。幕府の中枢を握った天人は侍達から刀を奪い、彼等を無力化したんだ」
もっと人も天人も歩み寄っていたなら・・・話す場を設ける事が出来たのかもしれない。戦争と言う一方的なやり方をお互いが押し付けるのではなく、ちゃんと話し合いの元に共存を選んでいたなら戦争で傷つく人も悲しむ人も居なかったのに・・・。
下を向いて拳をに力が入る。そんな彼女に気づく者は居なく、新八がさらに話を続ける。
新八「その後、主だった攘夷志士は大量粛清されたって聞いたけど・・・まだ残っていたなんて」
銀時「・・・どうやら俺達ァ踊らされたらしいな」
「そうみたいですね・・・」
銀時との言葉に疑問符を浮かべる新八と神楽。銀時との視線を辿れば、二人の言ってる事が分かる。
銀時「なァ、オイ飛脚の兄(あん)ちゃんよ」
桂の後ろに控えている男達の中をよくよく見れば、今朝小包を達に託した男が居る。
神楽「あっ、ほんとネ!!あのゲジゲジ眉デジャヴ」
新八「ちょっ・・・どーゆー事っスか、ゲジゲジさん!!」
「お怪我大したこと無かったんですね・・・。良かった」
男「お嬢さん・・・」
恐らく、バイクがお登勢の店に突っ込んだ事も小包を銀時達に託したのも全て桂の仕業だ。普通なら怒る所なのだがは3人とは違う態度を取る。例え何か理由があってこんな手の込んだ事をしたとは言え、男が怪我をしたのは嘘ではない。優しいの言葉に男は申し分けそうな顔をして、4人から視線を逸らす。理由は何であれ、やはり出来る事なら自分の目の前で傷ついて欲しくないと思う・・・。自分は人々を笑顔にする為に生きると大切な人と約束したのだから・・・。
銀時「全部てめーの仕業か、桂。最近世を騒がすテロも今回の事も」
桂「たとえ汚い手を使おうとも、手にいれたいものがあったのさ。・・・銀時、この腐った国を立て直すため再び俺と共に剣をとらんか。【白夜叉】と恐れられたお前の力、再び貸してくれ」
あぁ・・・そうだったんだ。桂の言葉に驚きよりも納得していた。銀時は言っていたじゃないか
銀時「こちとら目の前のもん護るのに手一杯だ。それでさえ護りきれずによォ、今まで幾つ零して来たかしれねェ。俺にはもう、何もねーがよォ。せめて目の前に落ちてる物があるなら拾ってやりてェのさ」
っと。あの言葉を聞いた時に、昔何かあったのだろうとは思っていたけれど、銀時の心の強さ剣の腕、あの時見せた悲しげに紅い瞳が一瞬揺らいでいたのも、戦争と言う過酷な中で生きてきた事を思えば全て納得いく。昨日まで笑い会っていた仲間が、突然居なくなるそんな世界。護りたかった者を目の前で何度も無くし、貴方は何度悔しかっただろう。護れない現実に何度絶望したのだろう。命を奪い合うしか出来ない中で、心は何度死にかけたのだろう。
ただその時は、桂を目の前にして佇む銀時の背中を見ながら言い様の無い切なさを感じるしか出来なかった。
銀時の昔を知る男、桂との出会い。銀時が【白夜叉】と呼ばれる由縁が今明かされ様としていた----
悲しい過去を抱える私と貴方。引き合う様に出逢ったのは必然