その二 新しい仲間
君の笑顔に、高鳴るこの胸----
場所は変わって、ある茶屋の前に7人のヤクザ風の男達とその中心にたつ人物(親分)が集まっていた。
親分「バカですかァァお前等!!娘っ子一人連れ戻すのに何、てこずってんの!?それでも極道か、バカヤロォォ!!それでもパンチパーマなのか、コノヤロー!!」
茶屋の団子を頬張りながら、部下の男達を怒鳴り散らす親分。
部下1「しかし兄貴ィ、相手はあの【夜兎族】ですぜ。俺らが束になったってどーにも・・・」
親分「バカですかァお前は!!だからこそだろーが!!あの怪物娘、上手い事使えば我ら斑池組(ぱんちぐみ)は天下をとれっかもしれないんだぞ!?奴らの種族はもう絶滅しかけてんだ、どれだけ希少価値があると思ってる。こっちの手に戻ってこねーようならよォ、もう構わねェ殺(バラ)せ。アレが他の組織に渡りゃ、とんでもねェ脅威になる。利用価値のねェ大きな道具は、処分した方がいい----」
その頃達はと言うと、電車のホームに居た。
「何とか見つからず来れましたね・・・」
新八「そうですね・・・。周囲にパンチパーマの影は無い?」
神楽「ないネ、大丈夫ヨ」
ゴミ箱に入り隠れている新八と神楽。運が良い事に、の姿は後姿しかヤクザには見られていないので狭い中を一緒に入らずに済んだ。道中名前を知らないのは不便だと、お互い軽い自己紹介をし、少女が【神楽】と言う名前だと分かったのだ。
新八「ココから電車に乗れば、ターミナルまですぐだ。故郷(くに)に帰れるよ」
「良かったですね、神楽ちゃん」
新八「それにしてもアイツ・・・。本当に帰るなんて・・・薄情な奴だ」
「銀さん・・・」
私は信じてます・・・。貴方は冷たい人じゃないって思うから----
神楽「気にしないネ、江戸の人皆そうアル。人に無関心、それ利口な生き方。お前やのよーなおせっかいの方が馬鹿ネ」
「神楽ちゃん・・・」
この少女は、ココに来てどんな目にあって来たのだろう・・・。こんな小さい女の子が、大人顔負けの言葉を紡ぐ。確かに人は自分の関心の無い物には冷たい。それはも旅をする中で散々味わって来た。だけど、神楽に分かって欲しかった。全ての人が冷たい人間では無いのだと・・・。銀時や新八、少なくともこの2人は決して冷たい人間じゃ無いから----
神楽「でも私、そんな馬鹿の方が好きヨ。だからの事は好きになれそうアル」
「神楽ちゃん・・・」
神楽「でもお前は嫌いだけどな」
この場面はどう見ても感動する場面ではないだろうか?新八も有難うと続くはずの言葉は、思いもしない神楽の辛辣な一言で台無しになる。
新八「アレ?今標準語で辛辣(しんらつ)な言葉が聞えたよーな」
「き、きっと気のせいですよ!!」
のフォローも空しく、言葉を続ける神楽。
神楽「私、メガネ男嫌いなんだよね」
まさに止めの【一言】である。流石のも苦笑いするしかない。
新八「オィぃぃ、キャラ変わってんぞ!!んだよ、もォ!!やってらんねーよ、ココまでやったのに!!」
「し、新八君落ち着いて!神楽ちゃんきっと照れ隠しで・・・」
神楽「!・・・・アレ?」
新八「どーしたの?」
「・・・?」
神楽「ぬ・・・抜けないアル」
「えぇっ!?」
新八「エ?アレ?ウソッ!僕まで・・・ウソッ!!ヤベッ・・・泣きそっ」
必死に体を動かして、ゴミ箱から体を抜こうとする2人だが見事にはまってしまい抜ける様子が無い。も2人が痛くない様にと力を出せないせいで、役に立てて居ない。そんな中、ホームのスピーカーからけたましい音が鳴る----
「っ!電車が!」
新八「ヤバイ、電車もう出る!!もういい、転がれ!!」
抜けない状況を打開出来ないまま、やけになった新八はゴミ箱にはまったまま電車に滑り込もうとするが・・・。何かにぶつかり動きを止めてしまうゴミ箱。
・新八・神楽「!?」
???「オイオイ、ダメだよ〜、駆け込み乗車は危ないよ。残念だったな神楽ぁ、もうちょとで逃げれたのに」
神楽「井上・・・!」
気づけば回りをヤクザ達に囲まれる達。まさしく絶体絶命である。
井上「何も言わずに逃げちゃうなんてつれないねェ。あんなに良くしてやったのに。金に困ってんじゃ無かったの?いいのかィ?ふりかけご飯の生活に逆戻りだよ?」
人の弱みにつけ込むヤクザの親分の井上。そんな卑怯な井上が許せなくて拳を握り締める。
神楽「人、傷つけてお金貰うもう御免ネ。何食べてもおいしく無いアル。良い汗かいて働く、ふりかけご飯もおいしくなるネ」
この少女は小さいながらも、ちゃんと分かっている。どんなにお金が貰えても、人を傷つけて貰うお金なんて気持ちが良い筈無いのだ。どんなに苦しくても、どんなに辛くても、汗を流して稼いだお金と言うのは胸を張れる事なのだから----
井上「戦うしか無い蛮族が言うじゃないか。ええ、夜兎族さんよ」
「・・・」
新八「夜兎族?」
井上「おやおや何も知らずに、コイツに協力してたのかィ。おたくらも名前ぐらい聞いた事あるだろう?最強最悪の傭兵部族「夜兎」。姿形(すがたかたち)は人間と大儀ないが、驚異的な戦闘力を誇り数多の星を潰してきた、ただ戦だけを嗜好(しこう)する戦闘民族よ。お前は隠して居た様だが、その透ける様な肌の色と傘が何よりの証拠。奴らは日の光を嫌い、常に日傘を離さないと言うからな」
スクーターに跳ねられても掠り傷所か、青痣さえ出来ない強靭な体。驚異的な傷の回復力。少女にはありえない怪力。考えてみればすぐ分かる事だ。彼女も【天人】----
井上「薄っぺらい道義心で、本能を拒絶した所で戦うお前は楽しそうだったぞ。お前の本能は、血を求めてるんだよ、神楽」
神楽「違うネ!!私は・・・」
その時、井上が突然2人の入っているゴミ箱を蹴り線路に落としてしまう。
「っ!?新八君!!神楽ちゃん!!」
慌てて自分も線路に飛び出そうとするが井上に止められる。
井上「おっと・・・。お嬢さんはココで俺達のお相手してもらうぜ?中々見ない上玉だ。神楽、戦えないお前に価値はない。
サイナラ」
「っ!?貴方、人を何だと----」
井上の物言いが許せなくて、腰にある鞘を抜こうとするだが沢山の部下に体を押さえつけられ身動きが出来なくなる。
「離してっ!離して下さいっ!新八君!神楽ちゃん!」
新八「ちょっ・・・ちょっと待てェ!!おいぃぃ!!駅員さん!!」
その時、電車が迫る音がする。このままでは線路に放り出されている2人が大変な事になる。
新八「ウソぉぉぉ!!漫画みたいなタイミングだ!!ちょっ、助けてェ!!」
井上「フン、あばよ」
を強引に連れて行き捨て台詞を残す井上達。電車はもうすぐそこまで迫っている----
新八「うわァァァァ!!」
電車が迫る中、電車とは違う音・・・。エンジン音が聞える。
新八・神楽「!!」
???「ったく手間かけさせんじゃねーよ」
新八「銀さん!!」
電車と共に聞えるエンジン音、その正体は銀時の愛車のスクーターの音だった。
銀時「歯ァくいしばれっ!!」
新八「え!?ちょっ・・・待ってェェ!!」
フルスピードで電車を追い抜かしたスクーターから、木刀を構え叫ぶ銀時。力の限りゴミ箱を殴り上げる----
新八「ぎぃやぁあああああああ」
空高く舞い上がったゴミ箱は井上達の真後ろに、激しい破壊音と共に落ちる。突然の音に振り返る井上達と。
井上「なっ・・・なんだァァ!!何がおきたァ!!」
神楽「私、戦うの好き」
「神楽ちゃん!」
破壊音と共に巻き上がった煙から出て来たのは、傘を構えた神楽。2人の無事?な姿に安堵する。
神楽「それ夜兎の本能・・・否定はしないアル。でも私、これからはその夜兎の血と戦いたいネ」
「!」
神楽「変わる為に戦うアル」
「変わる・・・」
井上「このボケがァ!!野郎共やっちまいな!!」
「ふふふっ、お仲間さんなら逃げてますよ?」
神楽に気を取られてる間に鞘を抜いたは、自分の拘束する男数人を叩き伏せていた。そんなと夜兎の神楽の登場に残った部下は逃げ始めていた。
部下2「もう、付き合ってらんねェ!!アンタ一人でやってくれ!!命が幾つあっても足りねーよ!!」
井上「あっ・・・お前等それでもパンチ・・・パーマぁぁぁ!!」
銀時「ハイハイ〜、てめーらウチの従業員拉致っておいて逃げれると思うなよ?」
そう言って逃げる部下達の前に現れた銀時は、木刀で部下達を残らず叩き伏せる。井上は神楽の傘による一撃でもはや屍も同然だ。
駅のホームではなにやらゾリゾリと音が木霊する。
神楽「助けに来るならハナから着いて来れば良いのに、訳の分からない奴ネ・・・。シャイボーイか?」
気を失った井上をベンチに座らせ、特徴的なパンチパーマを剃刀で丸坊主にしていく神楽。ゾリゾリと音がしていたのは、どうやらこの音だった様だ。
銀時「いや、ジャンプ買いに行くついでに気になったからよ(が)。死ななくてよかったね〜」
新八「僕らの命は二百二十円にも及ばないんですか」
「ふふふっ」
青筋を立てながら怒る新八とは逆に、何やら嬉しそうに笑う。その綺麗な微笑みに男2人ばかりか、神楽も見惚れる。そんな時漸く電車がホームに付き、正気に返った銀時が神楽に言う。
銀時「おっ、電車来たぜ。早く行け、そして二度と戻ってくるな災厄娘」
神楽「うん、そうしたいのは山々アルが良く考えたら故郷に帰る為のお金持って無いネ。だからもう少し地球(ココ)に残ってお金貯めたいアル」
神楽の言い分は最もだ。井上の元では金銭ではなく、三食裂鮭茶漬けだけだったのだから。しかしこの後とんでもない事を神楽が言い出したのだ----
神楽「と言う事で、お前の所でバイトさせてくれアル。それに私、が気に入ったヨ。江戸に来て初めて私に優しくしてくれたアル。もっと一緒に居たいヨ」
神楽の一言を聞いた銀時は、余りの驚きに持っていたジャンプを真っ二つに引き裂き、新八は青い顔をする。だけはこんな事になりそうな予感がしていたので驚く事無く、ニコニコ笑っている。
「ふふふっ、良い考えだけど万事屋で働いてもお金たまるでしょうか・・・?」
銀時「じょっ・・・冗談じゃねーよ!!なんでお前みたいなバイオレンスな小娘を・・・」
銀時が言い終わる前に、銀時と新八の後ろの壁に破壊音と共に
大穴が開く。
神楽「なんか言ったアルか?」
銀時・新八「言ってません」
「神楽ちゃん・・・。それは脅迫・・・」
こうして私達の職場は更に賑やかになりそうです。
万事屋へと帰る4人、不意に新八が疑問に思っていた事をに尋ねる。
新八「さん、何で銀さんが来る事分かったんですか?」
銀時「えっ、どうゆうこと?」
新八「いや、銀さんが歩いて行っちゃった後、さんだけは銀さんは必ず来てくれるって言ったんですよ」
「新八君、大丈夫です。銀さん、あぁは言ってるけどきっと力になってくれるはずです。こんなに可愛い女の子放って置くような人じゃないですよ----」
「何ででしょう、私にも分かりません。だけど銀さんなら絶対来てくれる予感がしたんです。初めて出逢った時も来てくれたから」
そう言って小さく笑う。
銀時「・・・」
ジャンプを買ったは良いけど、何となく集中して読めなくて・・・。それに何だか嫌な予感がして、達の後を追ってみれば案の定、男達に拘束されて連れて行かれると電車に跳ねられそうな新八達。昔からなぜかこうゆう感だけは人一倍効くんだ。逃げる部下共を殴り飛ばす必要なんて無かったけれど、を拘束していたかと思うとなぜか腸が煮えくり返って、気づけば一人残らず殴り飛ばしていた・・・。まさかが俺の事を信じてくれていたなんて思わなくて、照れ臭さで特徴的な頭を掻き毟る。
「銀さん、来てくれて、助けてくれて有難う御座います」
銀時「おー・・・」
の笑う顔を見ると胸がドキドキしやがる。一体この気持ちはなんなんだろうな・・・?初めて味わう自分の気持ちが分からない。この気持ちは何て呼ぶんだろうな----
ありがとうって、言いたいのは俺の方なんだ