貴方の為に出来る事、君の為に出来る事   



その四 見え始めた光

私が見つけた、新たな居場所----



新八「”絶景の夕日を見ながら天国へ”第一便、午後四時出航・・・」


あれから銀時は新八に行くぞっと、自分の愛車のスクーターに新八を乗せ走っていた。


新八
「ヤバイ!!もう船出ます!!もっとスピード出無いんですか!!」


銀時「いや、こないだスピード違反で罰金取られたばっかりだから・・・」


新八
「んな事言っている場合じゃないんですって!!姉上とさんがノーパンの危機なんスよ!!」


銀時「ちゃんはともかく、
お妙のノーパンぐらいでやかましーんだよ!!世の中にはなァ、新聞紙をパンツと呼んで暮らす侍もいんだよ


新八が焦る中、銀時がメチャクチャな事を言っていると2人を乗せるスクーターの後ろをサイレンが聞えて来た----


???「そこのノーヘル、止まれコノヤロー。道路交通法違反だコノヤロー」


とサイレンの鳴るパトカーから男が叫ぶ。


銀時「大丈夫ですぅ、頭固いから」


お巡り
「そーゆー問題じゃねーんだよ!!規則だよ規則!!


銀時
「うるせーな、かてーって言ってんだろ」


そう言うと隣に並んだパトカーから顔を出す男に頭突きをくらわせる銀時。見事に男の鼻に命中し、大量の鼻血が----


お巡り
「ギャアアア!!鼻血が!!良い歳して鼻血出しちゃった!!」


パトカーを追い越し、改めて前を向き直ると空を飛ぶ船。


新八
「っ!?ノーパンしゃぶしゃぶ天国・・・。出発しちゃった!!どーすんだァ!!あんなに高く・・・。あ”あ”あ”!!姉上とさんがノーパンにぃ」


新八が大きい声でそう叫んでいると、先程後ろを走っていたパトカーからまた男の声が----


お巡り
「何だとォ!!ノーヘルのうえ、ノーパンなのか貴様!!」


とお妙を乗せた船は既に空高く・・・。自分達が乗っているスクーターではどうにもならない。そんな時、パトカーを見て銀時の目が煌いた----




お妙「お妙でございます。可愛がって下さいまし」


「同じくでございます。可愛がって下さいませ」


場所は変わって、ココはしゃぶしゃぶ天国の船の中。道場に来ていた小さい男(社長)につれられ、さっそく予行練習だと2人は艶やかな着物に着替えさせられ教えられた通りする。


社長「ほぉ、門下生の姉さんは中々やなァ・・・。道場の娘の方は
違うゆーとるやろ!!そこでもっと胸の谷間を強調じゃボケッ!!


長い艶やかな黒髪を用意された簪で流し、白い肌に不釣合いの紅い口紅は、何とも妖艶で見る者を惑わさずには居られない容姿のをいやらしい目で見る社長。お妙も黒髪を綺麗に結い普段に比べ大人っぽい着物を着ているせいで美しい。


お妙「胸の谷間何て十八年生きて来て、一回も出来た事ないわよ」


と恐ろしい笑顔で社長の顔をわし掴むお妙。


社長「あ、スマン。やりたくてもでけへんかったんかィ・・・。
まァエエわ!!次、実技!!パンツ脱ぎ捨てていよいよシャブシャブじゃー!!


「っ!?」


は漸く新八が社長がノーパンと言う言葉に、過敏に反応示した理由が分かった。【ノーパン】とは要するに自分の下着を脱ぐと言う事なのか・・・。社長の口ぶりからまともな仕事では無いと思っていたが、ココまでとは・・・。お妙は分かって来たのだろうが、やはりいざやれと言われると戸惑う。中々脱ごうとしない2人に痺れをきらし、社長はに詰め掛ける。


社長
「今更怖気ついた所で遅いゆーねん!!」


そう言ってを押し倒す社長。


「っ!?」


お妙「さん!?ま、待って!!脱ぐなら私がっ・・・!!」


社長
「これも道場護るためや!我慢しーや!」


気持ちの悪い手が、の着物を脱がそうと触れる。お妙の為にと着いて来たが、やはり耐え切れそうに無い。お妙に1度視線を向け、心の中でごめんなさいと呟くと上に圧し掛かる社長を蹴り倒そうとしたその時----


社長「?なんやこの音・・・」


何かのエンジン音が徐々に近づいて来る音。一同がそちらに目線を送るとすごい速さで突っ込んでくる車。大きな轟音を響かせながら、達の部屋に突き刺さる。


「キャアアアア!!」


「ちょっと、ちょっと、何ぃ!?」



驚く中の客と従業員達。黒服の男達が社長を探し部屋に飛び込んでくる。


黒服
「社長ォォォ!!何事ですかァァ!!」


社長
「船が・・・船が突っ込んできよった!!」


部屋の壁を突き破り、舞い上がる埃に視界が一瞬塞がれる。余りの煙たさにとお妙は咳き込む。


社長
「アカンでコレ、パトカーやん!!役人が嗅ぎ付けて来よったんか!!」


そう社長が叫ぶと、舞い上がって居た埃が徐々に風に流され漸く視界がはっきりしてくる。


???「安心しなァ、コイツはただのレンタカーだ」


聞いた事がある低い男の声。その声にはもしかしたら来てくれるのではっと淡い期待を浮かべていた人物を思い出す。なぜそう思うのか何て分からない。けれどレストランで目が合った時から、忘れられずどうしてか惹かれてしまう綺麗な銀色----


銀時
「どーも。万事屋でーす」


新八
「姉上、さん!!まだパンツはいてますか!!」


パトカーの中から出て来たのは、銀時と新八だった。あの時、空に浮かぶこの船を追いかける為、半ば無理やりパトカーを奪ってきた。


「坂田さん、新八君・・・」


お妙
「・・・新ちゃん!!」


社長
「おのれら何さらしてくれとんじゃー!!」


新八「姉上とさんを返して貰いに来た」


社長
「アホかァァ!!どいつもこいつも、もう遅いゆーのがわからんかァ!!」


突然の2人の登場に驚く社長と黒服たち。


社長
「新八、お前こんな真似さらして道場タダですまんで!!」


新八「道場何て知った事っちゃないね。俺は姉上が何時も笑ってる道場が好きなんだ。姉上の泣き顔見る位なら、あんな道場いらない。それに、巻き込んでしまったさんを放ってなんかおけないね」


「新八君・・・」


お妙「新ちゃん・・・」


「私は、巻き込まれた何てちっとも思ってませんよ。私が好きでした事です。私こそお妙さんをちゃんと護れなくてごめんなさい・・・」


そう言って新八に微笑む。最初新八は誰だか分からなかったが、この声とあの温かな笑顔は間違いなくだ。色っぽい姿に赤くなる新八。隣に居た銀時も僅かに顔が赤い。


お妙「さん・・・」


社長
「ボケがァァ!!たった2人で何が出来るゆーねん!!いてもうたらァ!!」


社長の一言で4人を囲む黒服達。は応戦しようと腰に挿している愛刀に手を伸ばすが----


「っ!?」


しまった・・・。お妙について行く時、少しでも警戒させない様にと道場に刀を置いて来てしまっていた。いくら侍だと言え、この人数を素手で凌ぐのは辛い。そんな時、座り込んでいるの横に静かに近寄ってきた銀時が声をかける。


銀時「、忘れもんだぜ」


そう言って差し出したのは見慣れた自分の愛刀。名前は【雪月花】。の一番大事で大好きな人の名が入った形見----


「坂田さん・・・。有難うございます」


銀時から受け取ると大事そうに刀を抱き締め、心から安心した笑顔を向ける。そんなを見て優しい笑顔を一瞬向けた銀時は新八に声をかける。


銀時「オイ、俺とが引き付けてやるからてめーは脱出ポッドでも探して逃げろ」


新八
「あんたとさんは!?」


銀時「こんなご時世に、木刀と刀ぶら下げてんだ。俺ももこれくらい屁でもねーよ。てめーは姉ちゃんを護る事だけ考えろや。俺とは護りてェもん護る」


そう言って口端を釣り上げに笑いかければ、そんな銀時の自信に「ふふふっ」と笑い頷く。自分達が絶対絶命のピンチなのは変わらない筈なのに、銀時が言う言葉にはなぜか【大丈夫】だと思わせる何かがある気がする。


社長
「何をゴチャゴチャぬかしとんじゃ!!死ねェェ!!」


そう言って懐から銃を取り出すと達に向ける社長。その気配に逸早く反応した銀時とは、左右に別れ黒服達をなぎ払っていく。


銀時
「はィィィィ、次ィィィ!!」


凄まじい勢いで振られる木刀。黒服達は蟻の子の様に散っていく。


凄い・・・。逢った時から坂田さんには只者では無い何かを感じていたが、ココまで強いとは思いませんでした。


銀時を横目にも立ち塞がる黒服を床に沈めていく。しかし刀の鞘はされたままだ。


女だてらに刀持っちゃいませんて事か。中々やるじゃねーか。


黒服
「なっ・・・何だこいつ等!?」


お妙
「何っ!?」


新八
「でっ・・・でたらめだけど・・・強い!!」


恐ろしい剣圧で黒服をなぎ払う銀時に対して、の剣は静かだった。流れる様な鞘が、的確に相手の急所を狙い倒していく。正に【動】と【静】。見る者を惹き付けてやまない。


銀時
「新一ぃぃぃ!!いけェェェ!!」


新八とお妙の脱出路を確保し叫ぶ銀時。


新八
「新八だボケェェェ!!」


こんな時でも自分の名前を間違える銀時に対して突っ込む新八。突っ込み魂と言う奴だろうか・・・。
お妙の手を引き、長い廊下を走る新八。


お妙「新ちゃん、さん大丈夫かしら・・・。いくら何でも多すぎよ、敵が。何であそこまで私達の事・・・



新八「
んなのわからないよ!!でもアイツもさんも戻ってくる!!だってあの2人の中にはある気がするんだ・・・。父上が言ってたあの・・・」


???
「あ”あ”あ”あ”あ”!!」


そう言い掛ける新八達の後ろから、何とも情けない声が聞えてくる。


新八
「本当に戻って来た!!」


大勢の黒服に追いかけられながら走ってくる銀時。その手には着物姿のも居た。


銀時
「キツかったんだ!!思ったよりキツかったんだ!!」


新八
「ちょっと!!頼みますよ!1ページしかもってないじゃないですか!!」


銀時
「バカヤロー!!漫画家や管理人にとっては1ページはスゲー長いんだぞ。良いから脱出ポッド探せ!!」


「っ!?坂田さん、そこは!?」


言い合う2人にが声をかけると、巨大な空間に機械が所狭しと置いてある部屋に辿り着いた。


銀時「んだ、ココ!?」


新八
「動力室!?」


社長「行き止まりや」


何時の間に追いかけて来ていたのか、黒服を従えた社長が拳銃をこちらに向けながら部屋に入って来た。


社長「追いかけっこはしまいやでェ。哀れやの〜昔は国を守護する剣だった侍が、今では娘っ子2人護る事もでけへん鈍(なまくら)や。おたくらに護れる物なんてもう何もないで。この国も・・・空もわしら天人のもんやさかい」


銀時「
国だ、空だァ?くれてやるよ、そんなもん。こちとら目の前のもん護るのに手一杯だ。それでさえ護りきれずによォ、今まで幾つ零して来たかしれねェ」


銀時の言葉に振り向く。この人も自分と同じ・・・?護りたくて、護りたくて仕方なかった人(達)。自分も数え切れないくらい取り零しては、後悔し悔しくて・・・。もう失わない為に、剣術を学んだ。【あの人】との約束を護る為に----


銀時「俺にはもう、何もねーがよォ。せめて目の前に落ちてる物があるなら拾ってやりてェのさ」


自分に出来る事は僅かだ。けれど出来る事が少しでもあるなら、助けたいと思う。


社長
「しみったれた武士道やの〜。もうお前エエわ・・・去ねや」


そう言って引き金を引こうとする社長。しかし近くに居る黒服に止められる。


黒服
「ちょっ、あきまへんで社長!!”アレ”に当ったらどないするんですか。船もろともおっ死にますよ」


そう言って機械の中心部を指差す黒服。その意図に気づいたは近くに居る銀時の服の裾を引っ張り、小声で囁く。


「坂田さん、坂田さん。多分アレって動力源ですよ。アレ壊しちゃえば何とかなりませんか?」


が可愛らしく自分の裾を引き、至近距離で囁く物だから銀時の胸が高鳴る。艶やかな紅い唇に僅かに目が奪われる。


「坂田さん?坂田さん、聞いてますか?」


銀時「あ、あぁ。壊してみっか」


の呼びかけにやっと我に戻った銀時は、社長と黒服が言い合いをしてる内に動力部があるだろう機械によじ登る。


社長
「ア・・・アカン忘れとった」


黒服
「って・・・登っちゃってるよ、アイツ!!おいィィィ!!」


社長
「ちょっ待ちィ!!アカンで、それ!!この船の心臓・・・」


社長と黒服が止める中、漸く動力部に辿り着いた銀時は不敵な笑みを浮かべる。


銀時「客の大事なもんは、俺の大事なもんでもある。
そいつを護る為なら、俺ぁ何でもやるぜ!!


そう言い放ち、動力部に大きく木刀を振り下ろす銀時。瞬く間に機械にひびがはいり破壊されていく。


社長
「きいやァァァァ、ホンマにやりよったァァ!!」


大きな爆発音と共に、傾き落ちていく船。突然の船の降下に体が浮き上がり思うとおりに動かなくなる。


新八・お妙
「落ちてんのコレ!?落ちてんの!?」


銀時
「何この浮遊感、気持ち悪っ!!」


叫ぶ新八とお妙。銀時も僅かに顔が青い。


「っ!?」


その時を襲う危機があった。思い通りにならない彼女に、壁が迫る。自分体を襲うだろう衝撃に慌てて目を瞑れば温かい温もりに包まれる。襲ってくるはずの衝撃はを襲う事は無かった。船が海面に叩きつけられる僅かな瞬間、の開いた瞳に忘れようも無い綺麗な銀色が見えた気がした----




新八「幸い、海の上だったから良かった様な物の。街に落ちてたらどーなってた事やら」


あのあと、海に投げ出された新八達はあの時パトカーを奪われ自分達を追いかけてきた警察に無事助けられた。違法な商売をしていた社長と黒服達は、皆一斉に連行されていった。辺りは既に夕暮れ。


新八「あんな無茶苦茶な侍見た事無い」


お妙「でも結局は2人に助けられちゃったわね」


2人で海を見ながら話していると、後ろから怒鳴る声がする。


銀時
「んだよォ!!江戸の風紀乱す輩の逮捕に協力してやったんだぞ!!パトカー拝借したくらい、水に流してくれても良いだろうが!!」


お巡り
「拝借ってお前、パトカーも俺もボロボロじゃねーか!!ただの強盗だ、ボケ」


「そ、そうですよ。銀さんが居なければきっともっと大変な事になってましたよ!!」


銀時
の言う通りだっつうの!!だいたいな、元々ボロボロの顔じゃねーか!!かえって二枚目になったんじゃねーか」


お巡り
「マジでか!!どのへん!?」


「ふふふっ」


そんな銀時達を見つめながら新八は言う。


新八「・・・姉上、俺・・・」


お妙「
行きなさい。あの人達の中に何か見つけたんでしょ?」


侍が動くのに理由は要らないと教えてくれた銀時。出逢ったばかりの自分達に優しくしてくれた。自分が描いていた、強く優しい侍の姿は正に2人の事なんじゃないかと思う。


お妙「
行って見つけて来るといいわ、貴方の剣を。私は私のやり方で探すわ。大丈夫、もう無茶はしないから。私だって新ちゃんの泣き顔なんて見たくないからね」


新八「・・・姉上」


   
父「例え剣を捨てる時が来ても、魂に収めた真っ直っすぐな剣だけは無くすな」


そう死に際に言い残していった父。


父上、あの男の魂はいかなる物か。さんと違って酷く分かりづらいですが、それは鈍く・・・確かに光っている様に思うのです。今しばらく傍らでその光・・・眺めて見ようと思います----


「ねぇ、坂田さん」


銀時「ん〜?」


「私を万事屋で雇って貰えませんか・・・?」


銀時「・・・」


「やっぱり、駄目ですよね!すいません、坂田さん急に変な事言って・・・」


銀時「銀時だ」


「えっ・・・?」


銀時「これから仲間になるのに坂田さん何て他人行儀だろ?」


「っ!?」


万事屋(よろずや)、人を助ける何でも屋。あの人が願った望みを叶える為ににとって丁度良い働き口だった。そして、自分の心を惹いて止まないこの侍の【何か】。それを知りたいと思う。


「有難うございます!これから宜しくお願いしますね、”銀さん”」


それは運命だったのか、引き寄せられる様に出逢った2人。別々の道を歩いて居た2人の道は、ココで1つとなる----






今でも目を瞑れば鮮明に想い出す。貴方と出逢った日の事を