傍に居られるだけで・・・  第十八訓  溢れ出す想い  



過ごす時間長い程、想いは募るばかり----



「なるほど・・・。そうゆう訳ですか」


一泊二日の旅行から無事?帰って来た万事屋メンバー。旅の疲れを癒そうと我が家に戻って来た途端、普段中々鳴らない電話の音が万事屋に鳴り響いた。残念な事に、は朧の仕事があり銀時達と一緒に行く事は出来なかった。喜ぶべき依頼も相変わらずやる気の見えない銀時にとっては面倒以外無く、最初は新八と神楽に任せた等と不満を言っていたがに気をつけて頑張って来て下さいねと笑顔で言われれば子供の様に口を尖らせながらも渋々承諾した銀時。惚れた弱みと言うのだろうか、にはトコトン弱い銀時。普段、人に気を使ってばかりの聡い彼女なのにこんなに分かりやすい銀時の態度になぜ気づかないのだろうと新八は常々思う。


依頼の内容は簡単な物で、引越しの準備を手伝うと言う物だった。作業の方は珍しく順調に進みいよいよ依頼料を貰えると言う所で問題が起きた。と言うのも依頼人は小さい娘を連れた身重らしい女性だった。銀時が父親はどうしたんだ?と尋ねれば悲しそうに微笑みながらも身重の女性が父親がココに居ない理由を話してくれた。何でも5年程前に江戸に移り住んで来たらしく、貧しいながらも幸せな生活をしていたらしいのだが父親が突然事故で亡くなってしまい、小さな娘と身重の自分では生活も出来るはずが無く、実家に帰る所だと言う。近くに頼れる者も居なく丁度万事屋があると知って依頼したのだと言う。最初は面倒そうに話を聞いていた銀時だが、話を聞いている内に黙り込み何か考え出した。身重の女性が依頼料を新八に渡そうとしたその時、銀時は新八を手で制し依頼料は要らないと言う。突然の銀時の発言に驚く万事屋の2人と身重の女性。依頼料は要らないから、代わりにアレをくれと銀時が指差したのは依頼人の家の庭に生えていた立派な笹だった。何かを言いたそうな新八を黙らせ、譲ろうとしない銀時。結局1日の重労働の依頼料は何処に置くんだと言わんばかりの大きな笹だった。そして万事屋に戻り、先に家に帰っていたに今日あった話を聞かせた新八。


新八「まったく、万事屋の家計はさんが居ればこそやっていけていますが火の車なのは変わらないって言うのに・・・。何を考えているんでしょうか、あの人は」


「ふふふっ。銀さんらしいですよ」


神楽「?あの天パーの事怒らないアルか?」


「怒れるはず無いですよ。銀さんは間違った事してないですもの」


そう言って微笑む。その言葉に?を飛ばす新八と神楽。話はすごく簡単な事なのだ。唯一の働き手の父親を無くし、小さな娘を連れ尚且つ自分は身重な身体。暮らしは裕福なはずも無く、実家に戻ると言っても男手が無ければ引っ越す事も出来ないだろう。なけなしの生活費を依頼料にするのは目に見えていた。一早くそれに銀時は気づいたのだろう。それを言葉にする事は決してしない様な人だ。本当に優しい人だと思う。普段の態度からいい加減に見られガチだが、誰よりも人の事を見、誰よりも考えているのだと私は思う。そんな彼だからこそ沢山の人を惹きつけて止まないのだろう。世界の境界線と言う物を越えて、私をどうしようもなく惹き付けた様に・・・。


「銀さん、今日はお疲れ様でした。頑張ったご褒美です。好きな物今日は作ってあげますよ」


神楽「銀ちゃんばっかりずるいアル!!私も頑張ったヨ!」


新八「物壊してばっかりでしたけどね・・・」


神楽「何か言ったアルか?メガネ」


新八「ねねね、メガネ今絶対関係無いよね!?地味なの1人くらい居ないとこのアニメ濃いキャラばっかで続かないよね!?」


と言い合い、元い存続?をかけた戦い(言い合い)を始めた2人。その2人を相変わらず微笑みながら見つめている。そんな彼女にそっと忍び寄る銀時。


銀時「ねね、ちゃん。ほんと〜に何でも好きな物で良いの?」


「ひゃっ!ぎ、銀さん耳元で行き成り話しかけないで下さいっ!も、勿論です。何が食べたいですか?」


忍び寄ってきて行き成り耳元で囁く銀時に驚き、慌てて近かった2人の間を空ける。言わずも知れた彼女の顔は真っ赤だ。そんな反応のすばやいに沸き起こる笑いを何とか堪えながら何をリクエストしようかと考える銀時。少し考えて閃いた銀時は真っ赤な顔のままのの方に向き意地の悪い笑みを浮かべると再び彼女に近寄り耳元で囁く。


銀時「銀さんさァ、ちゃん食べたいわ」


「っっっ!?」


それは余りにも近くで囁かれた誘惑の言葉。赤かったの顔は可哀相なくらい赤みを増し、耳に心地よい銀時の低い声は身体の力を抜くのには十分で・・・。力の抜けた身体で立っている事は出来ず、ズルズルと床に座り込んでしまう。


銀時「くくっ、冗談だよ。そうだな〜、が作ってくれるモンなら何でもいいわ」


そう言って何時もの指定席に座る銀時。新八と神楽の戦いが終わり、声をかけられるまではずっとそのまま動けなかった。


ずるい、ずるいです銀さん・・・。貴方の声を聞くだけで幸せを感じる私にあんな事言うなんて・・・。必死に隠しているのに、必死で言い聞かせているのに、これ以上私を貴方の色に染めないで下さい・・・。貴方を好きだと想うこの気持ちをこれ以上溢れさせないで・・・。




好きですと、言えたらどんなに幸せだろう