貴方を想う心は、世界の境界線をも越えて----
これは夢なのだろうか----
白い、白い、真っ白な世界。自分が立っているのかも倒れているのかも分からない位何もかもが白で塗りつぶされた場所だった。
「ココはいったい・・・」
そう呟いた私に返答するかの様に響いた声。
???「ココは、現実と夢の挟間の世界。私がお前をココに呼んだ」
聞こえてきた声は、男性の様な女性の様な中世的な物でとても不思議な声だった。
「現実と夢の挟間・・・」
その時、私は分かってしまった。私がココに呼ばれる【理由】を。
「私は、もうすぐ死ぬんですね・・・?」
???「・・・・」
「そうですか・・・。いよいよなんですね・・・」
???「お前は、恨んでいないのか?物心も付かない小さなお前に小さな窓でしか世界を感じさせられない様にした【神】を」
「まったく恨んでないとは言えません。でも恨んだ所で何も現実は変わらないですよね?私が大好きな人が教えてくれたんです。自分の肉体が滅ぶまで背筋伸ばして生きていけって。私に与えられた一生だから、後悔して生きるより生まれてきて良かったってそう思いながら終わりたいんです」
銀魂を知って、貴方を知って---
私は自分の運命を恨みながら生きるのは止めようと。短い人生だったけれど、精一杯背筋を伸ばして生きようって思わせてくれた。だから私は自信を持って笑顔で答えられる。
???「そうか・・・。未練は無いのか?最後に望む事は?」
未練と言う言葉を聞いて、私の心臓は少しだけ跳ねた。薄情かも知れないけれど最後に浮かぶのは親でも友達でも無く大好きな、大好きなあの人の笑顔。もっと貴方を知りたかった。もう少しだけ「恋」する女の子で居たかった。そんな思いが頭を過ぎった。それでも私は-----
「未練なんて無いですよ」
???「・・・お前は嘘が下手だな。無いと言うのになぜ泣くのだ?」
「え・・・?」
頬に手を当てれば、そこには濡れた感触。どうして?あの人を想いながら死ぬのは幸せだと思っていたのに・・・。
それでも、心の私が叫ぶ。もう少しだけ、もう少しだけと。
想いながら死ねたら幸せなんて嘘だった。未練が無いなんて嘘だった。本当は、あの人が居ないこの世界に絶望してた。死ぬ事でその絶望から逃げようとしていたんだ。弱い、弱い私の心。
自覚してしまってからは、静かに流れていた涙はせきを切る様に溢れて止まらなかった。
その人は、ずっと私が泣き止むまで何も言わずに待ってくれて居た。
ようやく、私の涙が止まり始めた頃私は一つの願いを胸に抱いてその不思議な声の持ち主に聞いてみた。
「私の命は、あとどれ位あるのですか?」
???「1年・・・持って1年と3ヶ月だ。お前の体は病気によって施されてきた治療の数々によって、心臓に余りにも負担を掛けすぎてきた。しか
それを行わねば、今まで生きてこれなかったのも事実」
「1年と3ヶ月・・・」
それだけあれば十分だ。私の願いは----
「私を・・・私を【銀魂】の世界へ行かせてくれませんか!?」
ずっと、ずっと望んでいた私の【願い】。
望む事は罪だと思っていた。叶わない望みを持つだけ辛いと思っていたから----
それでも、心の中では望むことを辞められなかった。けして言葉にする事は無いと思っていた。私が生きていて初めての我侭。
胸に秘めていた恋心はもう止まらない