傍に居られるだけで・・・   第零訓  始まり  



恋に落ちたのは、本当にいつの間にか----


何も望んではいけないのだと、ずっと自分に言い聞かせてきた。


まだ、物心も付かない小さい私に神様は残酷な試練を与えた。風邪を引いてるわけでもないのに、堰が中々止まらない 私を心配した両親が病院に連れて行ってくれた結果、原因不明の病(所謂、不治の病)に私が罹っている事が判明した。


何でも、病気に対する抗体が下がる物で外に出ることは愚か人との接触も極力避けねばならないとの事で私の世界は ビニールに区切られた小さな窓から見える外の景色だけが全てになってしまった。


私が小さな世界に閉じ込められて20年。私も20台を半ばになろうと言う頃になっても、未だに原因不明の病気の 治療法は見つからず、私の体は様々な薬品の投与による物で痩せ細るばかり。 主治医も両親も私に直接は言わないけれど、きっと私の命も長くは無いだろうと分かっていた。
そんな人生でも、私に唯一生きている楽しみを与えてくれたのが【銀魂】だった。 私が銀魂の存在を知ったのは、両親に一度だけ我侭を言って買ってもらったノートパソコンがきっかけだった。 ネットの中だけは、私は【普通の女の子】で居られたし友達も沢山出来た。そんな友人たちが教えてくれたのが銀魂 だった。


【坂田 銀時】と言う主人公を中心に万事屋メンバーや真選組、それを取り巻く江戸の人々。ハチャメチャな生き方や 己の【武士道(ルール)】を貫く登場人物たちに私は衝撃を受けたのを今でも覚えている。そんな世界に憧れて、その世界の 中心人の坂田 銀時と言う人に特別な気持ちを抱くようになったのは何時からだろう。 自由な生き方に、己を貫く強さに、彼を知れば知るほど惹かれていって・・・。 気づいた時には、アニメのキャラクターに【恋】をしてしまっていた。 どんなに願っても、どんなに想ってもけして報われることの無い想いだとしても・・・。 小さな窓から見える世界しか知らない私に、人に恋する気持ちを教えてくれたあの人に----


後悔は決して無い。私の短い一生で一世一代の恋だから。






と呼ぶには軽すぎてと呼ぶには不確かなこの想い